高木ユーナ『不死身ラヴァーズ』3巻

不死身ラヴァーズ(3)<完> (講談社コミックス)

不死身ラヴァーズ(3)<完> (講談社コミックス)

不死身ラヴァーズ(1) (講談社コミックス) 不死身ラヴァーズ(2) (講談社コミックス) 不死身ラヴァーズ(3)<完> (講談社コミックス)
いわゆる「ループ」モノに分類されるであろうSF漫画の最終巻。主人公(甲野じゅん)は中学生の頃に長谷部りのというクラスのマドンナ的存在の女の子に恋をした。そして告白して、彼女に思いが届いたその瞬間……つまり「両思い」になった瞬間、なぜか長谷部りのは存在そのものがこの世から消失し、長谷部りのを知る人間は主人公だけになる。主人公は恋心と喪失感の狭間で悶絶するが、しばらくすると顔は似ているものの全くの別人である新たな「長谷部りの」が、主人公の前に再び現れる。主人公は同級生、バイト仲間、小学生、人妻等の様々な「長谷部りの」に毎回恋焦がれ、2人が両思いになる度に「長谷部りの」は忽然と消える……という、なかなかオリジナリティのある設定である。
1〜2巻は凄く面白く、今後どう決着をつけていくのかとワクワクしたが、なんかもう、非常にガッカリな3巻になった。ページ中には「第一部完」と書かれていたが、帯には「最終巻」と書かれているから、打ち切りで、もう続きは書かれないのではないかと想像している。
何がガッカリって、最後のオチ自体が、伏線というか新たな謎になっていて、読者はその謎の前に放り出されてしまったことである。この漫画のラストでは、私は「なぜ『長谷部りの』が消えるのか」という作中の根本問題が解明されるか、解明されないまでも主人公と「長谷部りの」の二人の関係に何らかの決着がつくべきであると思う。しかしそのどちらの道も示されず、全く想像もしていない事態が発生する。そして「なぜそんな風に消えるんだ?」という新たな謎だけが呈示され、唐突に完結するのである。作中には「両思いになった相手が消える」現象に苦しんでいる人が主人公以外にも登場しており、(作品の性質上それほど長編にはならないと思っていたので)この人物との出会いがラストに繋がる手がかりになると勝手に予想したのだが、この手がかりもほとんど放置に近い。
いわゆる村上春樹的な「あえて謎のまま残す」という手法が許される文学的な作風であれば良いが、読者の多くは本作をSF的な・あるいは不思議ミステリ的な感覚で手に取っている。Amazonのレビューも全員が低評価だが、それも頷ける。読者としては「まだ完結していない」という思いしか抱けない。