鎌谷悠希『少年ノート』5巻

少年ノート(5) (モーニング KC)

少年ノート(5) (モーニング KC)

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音に対しての感受性が人一倍豊かなボーイソプラノの少年を中心とした合唱部漫画。これは部活漫画・青春漫画であると同時に、「ボーイソプラノ」という声変わりによって避け難く喪われる「才能」を描いた作品である。
この巻は、「才能」や「資質」を掘り下げた本質的なエピソードが多い。例えば、なぜか女言葉を使う主人公の兄。兄は傑出したボーイソプラノであり歌うことも大好きだったが、声変わりによりボーイソプラノが喪われたことで、歌うことをやめて世界中をふらふらと放浪している。まるで宙に浮いたような軽い感じの人間に見えるが、少年から大人の肉体へと変わったことを未だに正面から受け止め切れず、過去にとらわれているという意味では重さのある人間性である。
また大人にならざるを得なかった兄とは逆に、まだまだ自分は子供なのに、身長がズバ抜けて高いばかりに周囲から大人として見られがちな主人公の親友のコンプレックスが対比的に描かれる。また彼は父母から「兄」として弟や妹の面倒を強制され、勉強や休息や好きなことが十分にできないことで、(理不尽とまでは言えないものの)ややストレスフルな環境に身を置いている。大人・子供とは何か、成長とは何かという問いを突き付けるのである。
そして極めつけは、世界的に有名で、主人公とも仲良くなったボーイソプラノの歌い手(ポポちゃん)が、声変わりを迎えてしまうというエピソード。主人公の声がどう喪われていくのかに興味があったが、まずポポちゃんが声変わりしたかー。