浅沼信爾+小浜裕久『途上国の旅:開発政策のナラティブ』

途上国の旅 開発政策のナラティブ

途上国の旅 開発政策のナラティブ

著者は二人とも経済学畑の学者のようだが、よくあるマクロ・ミクロ分析のようなものは出てこない。発展途上国はそれぞれ異なる前提条件から異なる発展の仕方をしている(はずだ)が、著者たちはそこから一般的なモデルを生み出すアプローチは採用しない。各国の違いを違いとして受容し、差異を損なわないようそれぞれの国の開発経験を分析的に描き、またそれらを比較することで、途上国の発展の成功と失敗の要因を探そうとしている。著者たちはそれをロドリックという研究者に倣い「カントリー・ナラティブ」と呼んでいる。
さて、そうしたカントリー・ナラティブなアプローチで描かれた国は日本を含む11ヶ国だが、どれも著者たちが実際に開発調査や研究に関わった国ばかりのようで、それらの「経験談」がプラスに寄与している、ように思う(専門家じゃないからただの感想だけどね)。一読して「なるほど!」と言えるほどシンプルで役に立つ結論が導き出されているわけではないが、興味のある人は読んでみると良いかもしれない。
なお個人的には、中国とインドという世界経済を牽引する2大・途上国が載っていないのが残念だった。あと東南アジア中心というなら、ビジネスのポテンシャル的にはタイとフィリピンも載せてほしかったなあ。