稲田将人『経営参謀』

経営参謀---戦略プロフェッショナルの教科書 (戦略参謀)

経営参謀---戦略プロフェッショナルの教科書 (戦略参謀)

戦略参謀―――経営プロフェッショナルの教科書 経営参謀---戦略プロフェッショナルの教科書 (戦略参謀)
マッキンゼーコンサルタントによるビジネス小説。
(ちゃんとしたビジネスパーソンによって書かれた)ビジネス小説は個人的に好きなので、見かけたらできるだけ手に取るようにしているが、本書はアオキやスーツカンパニーといった紳士服専門店を舞台とした『戦略参謀』の続編である。今度は主人公がレディスのアパレルブランドを取り扱う会社に転職しており、ファッションと言っても大してバリエーションのないメンズスーツから、流行の振れ幅の大きいレディスブランドに移って奮闘している。レディスには在庫という重要な問題が発生する。メンズでは余程のことがない限り、今期売り切れなくても来期かその次には在庫をさばけるだろう。しかしレディスではトレンドを外してしまったら、その在庫はもうゴミに近い。
前作と本書に共通して共通的なのは、改革には「抵抗勢力」が存在し、その抵抗勢力を取り込むか、排除するかしない限り、改革は上手く行かないと(物語の中で)読者に示している点だ。作者はそうした一連のプロセスを「憑き物落とし」と呼んでいるが、彼ら抵抗勢力も決して会社に害をなそうとしているわけではない。彼らは(妥当とは言えないが自分自身のロジックにおいて)会社のために働いているか、自分のために(保身のために)働いているだけである。しかし結果的には損害を与えている。また会社が大きくなると、そうした各人の思惑の中で狡猾に立ち回る人間も出てくる。
変革は綺麗事ではない。