1年間の振り返りとして、2017年に読んだ本の中から特に印象深かったものを取り上げてみたい。
土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
極私的にはこの本が一押し。生活とは何か、食とは何か、生きるとは何か……深く考えさせられる1冊。この本で救われた人も多いだろうし、まだの人は読めば救われる。所詮は「メシ」でっしゃろ。凝った料理を作る必要などない。それどころか、昨日と同じ料理でも全く構わないし、具なしの味噌汁と漬け物だけでも十分なのである。自分のご飯を自分で用意するという基本線に立ち返ることが重要なのだと。わたしには欠けていた発想である。
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宮内悠介『スペース金融道』
もう3回か4回読んだ。小説では圧倒的に今年の一押しだな。明白に『ナニワ金融道』のパロディというかオマージュなのだが、笑えて考えさせられて、センス・オブ・ワンダーがある。最高!
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機本伸司『卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動』
穂瑞沙羅華の課外活動シリーズも、これにて完結。もう少し続けてほしかったが、このあたりが潮時なのかもなー。次回作では、もっともっと楽しませてほしい。期待。
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米澤穂信『いまさら翼といわれても』
アニメ化もされた古典部シリーズの最新作。最初は主人公やヒロインのキャラクターにあまりピンと来なかったのだが、改めて読み返して、一気にファンになった。早く次回作が読みたいが、かなり先になるんだろうなー。
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半藤一利『日本のいちばん長い日(決定版)』
ここからノンフィクション。これは何度となく映画化もされた有名な本なのだが、これまで何となく読んでこなかった。しかし読んで驚いた。凄まじい本だ……。
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小松貴『フィールドの生物学14 裏山の奇人 野にたゆたう博物学』
これもノンフィクションの傑作と言って良い。文字通り「そこら辺にある裏山」で驚くような大発見を幾つも成し遂げ、裏山の奇人と呼ばれている著者。これは著者にセンスがあるからでも、その裏山がたまたま特別だったからでもない。著者が誰よりも自然を愛し、昆虫を愛し、そして誰よりも長い時間をフィールドで過ごしてきたからである。いわば執念の本であるが、著者はそれを軽く語る。自分にはこれしかないからと。しかしそれが逆説的に凄まじさを浮かび上がらせている。
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前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』
この人も小松貴と同じく、バッタの研究に執念を燃やしてアフリカの砂漠にまで行っちゃった人である。小松貴ほど研究テーマについて詳しく語られていない点はイマイチだが、その代わりポスドクの就職難についての話が面白い。というか身につまされる。
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三枝匡『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』
『戦略プロフェッショナル』『経営パワーの危機』『V字回復の経営』はビジネス小説の白眉と言えるのだが、現実をモチーフとしながらも、あくまでもフィクションであった。しかし本書は違う。著者が心血を注ぐミスミの生の経験が語られている。物凄い本だ。今年読んだビジネス書の中では圧倒的に良かった。
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米国戦略諜報局(OSS)+越智啓太+国重浩一『サボタージュ・マニュアル 諜報活動が照らす組織運営の本質』
今年イチバン面白かった本……は、少なくとも極私的にはこの本になるだろう。最近の読書にかかるモヤモヤを吹き飛ばしてくれた本である。来年からは再読しまくるし、再読の記録もつける。自分で言うのもアレだが、これでわたしは一段階か二段階、成長できるだろうな。他の人にも大推薦の本。
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中室牧子+津川友介『「原因と結果」の経済学』
「因果推論」をテーマとした経済学というかデータ解釈の基本というか。要するに「相関関係」と「因果関係」は違うよという本なのだが、実に面白い。
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村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』、村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』、村上春樹+川上未映子『みみずくは黄昏に飛び立つ』
最後は村上春樹枠で。わたしはハルキストと呼ばれるのを好まないが、村上春樹の小説は好きである。
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