キャロル・マーティン『人材を見逃さない見抜く面接質問50』

人材を逃さない 見抜く面接質問50

人材を逃さない 見抜く面接質問50

  • 作者: キャロル・マーティン,岡村桂
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2008/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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解説もそこそこに、すぐ本編に突入する。
三択問題で、適切な質問を選ばせるのが第1章。

3 募集職種に必要な能力があるかどうかを知る
最も多くの情報が得られる効果的な質問は次のうちどれか?
A この仕事に対する適合度を自己採点するとしたら、何点になりますか
B この仕事で求められる最も重要な資質は何だと思いますか
C この仕事に対して、あなたはどのような付加価値をもたらすことができますか

同じく三択問題で、質問に対する最も優れた回答を選ばせるのが第2章。

26 あなたなりの工夫で問題を解決したときのことを話してください
この質問に対して、的確に答えているのはどれか。
A (かなり長いので省略)
B (同上)
C (同上)

第1章と第2章がそれぞれ25問ずつで、それぞれ問題と回答だけでなく、何故その選択肢が良いのか(悪いのか)も解説してくれている。
しかし本書には「そもそも論」がない。すなわち本書には、面接をどう構成すべきか、面接とペーパーテストをどう使い分けるべきか、優秀な人材とはどういうことか、というフレームワーク的な視座が全然ない。したがって人事マネジメントや人材アセスメントに関する経験や知見が十分でない方は、本書を使いこなすのは難しいと思われる。
なお、回答にも、一見する限り、あまり納得感はない。例えば、上記で挙げた3の問題に対する回答は、B・C・Aの順で優れた回答ということになるのだが、CよりBが良い質問である合理的な解説は、私には見受けられなかった。
またAについても、確かに点数を聞くこと自体に意味はないと私も思うし、こういうチャラチャラして意図の不明瞭な質問が私は嫌いである。応募者は必ず「これは高い点数と低い点数のどちらがより好ましい答えなのだろう?」と構えてしまい、空気を読み始め、結果として応募者の本質をより引き出しにくくなってしまう可能性が高いからである。しかし上記の質問も「やり方次第」で上手く機能する可能性がある。質問は、必ずしも単発で良い・悪いを決められるとは限らないからである。

余談

やや余談めいてしまうが、上記の質問を上手く機能させる「やり方」を今テキトーに考えてみた。
「この仕事に対する適合度を自己採点するとしたら、何点になりますか」と聞いて、60点と答えた人に対して「自信のない人を採る気はないんですよね」と言ってみたり、95点と答えた人に対して「残りの5点は何ですか」と聞く程度では、確かに大した質問ではない。
だが、例えば点数を聞いたあとに「なぜその点数にしたのか、その基準または理由を具体的に教えてください」と聞くと、その人の考え方を深く理解できる可能性がある。
その応募者は雰囲気で回答したのかもしれないし、100点満点の理想的な適合状態を定義して、そこから自身のGAPを整理したのかもしれない。必要なスキルを洗い出して積み上げで点数換算したのかもしれない。担当職務の経験有無をパーセンテージで出したのかもしれない。これまでに知り合った上司や同僚を何人かベンチマークとして設定しているのかもしれない。そうした回答を受けて「なぜそのやり方で適合度を測れると考えたのですか」と聞くと、その人がどの程度その担当職務への適合度を俯瞰的・分析的に整理してきたかを理解できる可能性がある(あくまでも可能性である)。
応募者が即答できなくとも、そのまま「では、今この場で、この職務において必要な能力要件を重要なもの3つに絞って定義してください。また今回の募集職種に必要なレベルも定義して、その定義に今あなたがどの程度フィットしているのかと、離れている場合どのようにしてキャッチアップしたいと考えているかを整理してください。加えて、今後あなたが次のステージに到達するためのプランも整理してください」と質問しても良い。応募者は、先ほどは点数の基準をスラスラ答えられるほど事前に整理していなかったかもしれない。しかし今度は、自分の仕事に必要な能力は何かを普段からきちんと考えながら仕事をしてきたか、またそれを(面接という適度なストレスのかかった場で)相手に伝わるように適切にアウトプットすることができるか、ということを明らかにすることができる。
繰り返すが、質問は、必ずしも単発で良い・悪いを決められるとは限らない。