長尾清一『先制型プロジェクト・マネジメント』

先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

タイトルに興味を抱き、直感的に購入してみた。
内容は「ほどほど」だが、本書の前提に深く首肯した次第。

 本書は、生のプロジェクトは教科書どおりには進まない、プロジェクトを必ず成功させる「正解」は存在しない、プロジェクト現場から見て「プロジェクトをいかに失敗させないか」という現実的な視点を基調とした。プロジェクトの理想像を描く従来のプロジェクト・マネジメントの解説書に比べ、いささか暗いかもしれない。しかし、これがプロジェクト・マネジメントの前提である。
 私にこの重要な前提を気づかせてくれたのが、米国でのプロジェクト経験である。ある意味、私の原点となっている滞在15年間でのプロジェクトの失敗経験が、「きれいごと」では済まされないマネジメントの本質を教えてくれた。
 それらの経験に基づき、「べき論」を極力避け、プロジェクト・マネジメントの各プロセスで何をすべきかの「What」だけでなく、行動理念を形成するためになぜそれが必要なのかの「Why」、実務者にとっての実践的なポイント、すなわち具体的にどう実践するかの「How」を軸に、話を進めている。

正論をぶつけるだけが能ではない。ツールや方法論が全然ないのは論外だが、あったからと言って上手く行くとは限らないのがプロジェクトの常である。著者の他の本も読んでみたくなった。