千野帽子『俳句いきなり入門』

俳句いきなり入門 (NHK出版新書 383)

俳句いきなり入門 (NHK出版新書 383)

俳句の入門書という点では、昨日読んだ藤田湘子『新版 20週俳句入門』が非常にわかりやすく、入門書としてはあれでファイナルアンサーという感じなのだが、既に買ってしまったということもあり、本書も読んでみた次第。なお本書でも、藤田湘子『新版 20週俳句入門』は優れた俳句入門書として紹介されていた。incubator.hatenablog.com
本題に入るが、本書はプロの俳人ではなく自称「日曜文筆家」による俳句の入門書である。正確には、俳句の面白さというよりは句会の面白さを紹介し、初心者を俳句にハマらせようとしている本である。4章から6章などで俳句の基礎的なルールや技術も紹介しているが、それは句会を楽しむための素養としての説明である。
俳句に親しむ層を増やすという点では、必ずしも「この道何十年」のプロの俳人が俳句入門書を作る必要はなく、むしろ素人ながらも俳句作りを楽しんでいる方が入門書を書くというのは良い試みだと思う。
ただし本書は、舌鋒鋭くというか口汚くというか、とにかく著者が気に入らないことに対する批判・罵倒の嵐が凄まじい。例えば、俳句を通じて自身を表現したいと思う層および彼らによって作られた俳句を「ポエマー」「ポエム」と蔑視し(これが蔑称になるのは著者が俳句を詩歌とは捉えていないからである)、1回や2回どころか、数十回にも渡り本書の中で槍玉に挙げられ、罵られている。また俳句を「作る」という表現は良いが、俳句を「詠む」という表現は気に入らない、それどころか俳句を「ひねる」に至っては風流ぶりの極みだそうで、

俳句を「ひねる」などという鈍感な奴は俺がひねり潰してやる

とまで書いている。
ひねり潰すも何も、著者は別に俳人でもなければ、俳句界を背負って立つ存在でもない。もちろん親の敵でもあるまい。よくそこまで書けるよなと思う。