宮内悠介『盤上の夜』

盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

友人から借りて読了。
囲碁・チェッカー・麻雀・古代チェス・将棋……いわゆる盤上遊戯(ボードゲーム、卓上遊戯とも)をモチーフとした連作短編集である。創元SF文庫というSFレーベルから発売されているが、直木賞候補にもなったように、ジャンルを超えた魅力を持った本である。
いわゆる盤上遊戯は、コンピューターの解析の対象になってしまう運命にある。シンプルな遊戯は既に解析が完了しており、チェス・オセロ・将棋あたりも(まだ完全な解析は済んでいないが)コンピューターの実力は既に人間と遜色無いところまで到達している。麻雀は確率の入り込む遊戯なので完全解析という概念はないかもしれないが、人間と同等の強さを持っていると言えるかもしれない。いずれにせよ、そう遠くない未来、大半の盤上遊戯において人間はコンピューターに勝てなくなるだろう。
では、大半の盤上遊戯は楽しみを喪失したか……と問われると、必ずしもそうではないように思う。それでもなお、人智を結集した……いや人智を超えた戦いを見せる一流の戦いには惹かれるところがある。そういう心理状態や極限状態を描いた本である。
面白い。