鈴置高史『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』

「独り相撲」で転げ落ちた韓国

「独り相撲」で転げ落ちた韓国

日経ビジネスオンライン上に「早読み 深読み 朝鮮半島」のタイトルで連載した記事に加筆・修正して構成した、韓国の「離米追中」を描いたシリーズの第6冊目。

これまでのシリーズで散々検証してきたとおり、韓国という国は「アメリカ」と「中国」の二大大国に挟まれ、かつ「目の上のたんこぶ」たる北朝鮮を御することもできず、最近はアメリカと中国を手玉に取る「二股外向」を繰り広げてきた。しかしそんなことが上手く行くはずもなく、近頃は混迷の度合いを深めている。そして着実に、中国サイドに引きずられている……というのが離米追中の本質である。

そして実は対日問題とは、はっきり言って上記の米中問題・米韓問題・中韓問題の難しさの中で何とか韓国が生き延びるために身につけた処世術として生まれているに過ぎない。具体的には、軍事同盟国たるアメリカの要求を韓国が撥ね付ける際に「アベのせいで(もしくは慰安婦問題に真剣に取り組まない日本のせいで)協力できない」と言い訳をするための対米カードであり、国内に閉塞感が漂ってきたときに(アメリカや中国と違って噛み付いても怒られない)日本を槍玉に挙げて国内世論のガス抜きをする、憂さ晴らしの内省カードである。

それでも、あまりにも執拗な「終わりなき反日」に世界が疲れているのも事実で、アメリカは明白に「歴史問題を外向カードにするな」と韓国に通告しているし、日本は日本で、政府は「会いたくないなら別に会う必要もない」と韓国を無視し始めているし、世論もいわゆる嫌韓(韓国が嫌い)や呆韓(韓国に呆れている)や避韓(韓国に関わりたくない)という風潮が増している。これをネトウヨだの日本社会の右傾化だのとみなすのは、本質が見えていない人間か、極端なリベラル思想の人間だけであろう。

もうひとつ、本書(シリーズ第6弾)では、第1弾〜第5弾ではほとんど出て来なかった東アジアの勢力が登場する。ロシアである。冷戦終結後、朝鮮半島へはほとんど関心を失ったかのように見えるロシアだが、ロシアは近年、北朝鮮との繋がりを密にしている。しかも対独戦勝記念式典に南北朝鮮の首脳を招待しようとするなど、ロシアは明らかに朝鮮半島への関心を強めているのである。

さらにもう一点。このシリーズ全体を通じてもやっと感じていた違和感を言い当ててくれていたのが、本書の以下の記載である。

 韓国メデイアは事実よりも「そうであってほしいこと」を書くのが仕事なのです。趙甲済氏はそれに非常な危惧を抱き、厳しく批判してきました。
 日本にも事実を大事にしないメディアがあります。が、韓国の場合、ほとんどのメディアが一斉に「そうであってほしいこと」だけを報じるので、一種独特な、独自の世界観に支配されるのです。

保守系メディアもリベラル系メディアも、切り口と主張は異なるものの、自分たちにとって「そうであってほしいこと」だけを書くのは同じである。保守系メディアなどは未だに全世界から愛される韓国とか、朴槿恵のファッションに世界が魅了されたとか書いている。アメリカから日本との歴史問題を外向カードにするなとはっきり通告された(怒られた)時も、ほとんど全てのメディアが意図的に誤訳したという。はっきり言って異様だ。しかしだからこそ韓国専門家と呼ばれる著者が韓国メディアを毎日つぶさに分析することで、韓国の空気が手に取るようにわかるのである。非常に良いシリーズである。

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