インキュベ日記

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ジョーゼフ・キャンベル+ジム・モイヤーズ『神話の力』

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話学者のキャンベルとジャーナリストのモイヤーズの対談集。ボリュームのある本で、読むのは正直けっこう疲れた。しかし読んで損のない本である。たとえばこのモイヤーズという人はジャーナリストはなかなか鋭い。神話のことをそれなりに勉強して知っており、かつキャンベルとは旧知の仲であるにもかかわらず、「なあなあ」でインタビューをしない。神話なんて不要ではないかと神話学者に対して冒頭で問いかけるなど、対話役としては相当にキレのある立ち回りである。

モイヤーズ 私は先生のご本——例えば『神の仮面』や『千の顔を持つ英雄』——を読むことで、神話は人間が共通に持っているものを明らかにしてくれるということを理解するようになりました。神話は、われわれがどんな時代にあっても、真理を、意味を、重要な価値を探し求めている、その物語である。みんなが、われわれの物語を語り、またそれを理解しなくてはなりません。われわれはみな死というものを理解し、死に対処しなければなりません。そしてだれもが、誕生からおとなへの、それからまた死への過程において助けを必要としています。みんな、生命の意義を知り、永遠なる存在に触れ、神秘的なものを理解し、自分が何者であるかを発見する必要があります。


キャンベル 人々はよく、われわれみんなが探し求めているのは生きることの意味だ、と言いますね。でも、ほんとうに求めているのはそれではないでしょう。人間がほんとうに求めているのは〈いま生きているという経験〉だと私は思います。純粋に物理的な次元における生命経験が自己の最も内面的な存在ないし実体に共鳴をもたらすことによって、生きている無上の喜びを実感する。それを求めているのです。結局そこがいちばん肝心なところです。私たち自身のうちにそういう喜びを見いだす助けとしてこれらのかぎがあるのです。


モイヤーズ 神話はなにかを解くかぎだとおっしゃる?


キャンベル 神話は、人間生活の精神的な可能性を探るかぎです。