山口周『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』

外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント

外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント

いわゆる「外資系コンサル」のノウハウを世に開陳して金を稼いでいる方。こう書くと批判的なスタンスだと思われるかもしれないが、この人の本は非常に品質が高く、これまで山口周の著書の大半を読んでいるのではないだろうか。
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本書も、プロジェクトを成功させるためのノウハウが色々と公開されていて、興味深く読み進めることができた。ただし、ノウハウ自体はあまり構造化されておらず、やや五月雨感があった。そもそもプロジェクトマネジメントのノウハウはあまり綺麗に体系化できない……というのであれば、それはそれで有益な示唆だとも思うが。

なお本書を読んで一番ハッとしたのは、優秀な部下とイマイチな部下を抱えたときのアサイン方針についてである。優秀な部下とイマイチな部下が2人いて、難しいタスクと簡単なタスクがある場合、まずほとんどの上司は難しいタスクに優秀な部下をアサインし、簡単なタスクにイマイチな部下をアサインするだろう。本人の力量に合った仕事を割り振るのが最も基本的な適材適所だ……と思うからである。しかし、これは間違っていると著者は説く。どちらも共倒れになるリスクがあるからである。著者の考える正解は、簡単なタスクに優秀な部下をアサインし、難しいタスクにイマイチな部下をアサインするというものである。そして簡単なタスクは優秀な部下に完全に任せてしまい、それを忘れる。そして難しいタスクはプロジェクトマネージャーが腕まくりして全面的にイマイチな部下を支援し、難しいタスクを乗り切っていく……というものだ。通説だと、プロジェクトマネージャーは確かに難しいタスクと簡単なタスクのどちらもしっかりマネジメントせねばならないが、著者の推奨案だとマネジメントが必要なのは実質的に難しいタスクだけである。また、部下の成長という点からも、「完全に任せる」ことで、簡単なタスクであっても部下を成長させることができるだろう。

組織における学習・成長というのは奥が深い。