大庫直樹『地域金融のあしたの探り方 人口減少下での地方創生と地域金融システムのリ・デザインに向けて』

地域金融のあしたの探り方―人口減少下での地方創生と地域金融システムのリ・デザインに向けて

地域金融のあしたの探り方―人口減少下での地方創生と地域金融システムのリ・デザインに向けて

元マッキンゼーのパートナーで、いくつも銀行に関する本を書いているコンサルタントによる最新作。マクロデータを色々と分析して提言しているが、学者的というか何というか。でも(人口減少と高齢化が影響を打ち消し合うために)人口減少による業績低迷リスクは短期的には低いという指摘(もちろん長的にはしっかりと低迷する)など、けっこう興味深いものも多かった。

あと目次が非常にコンサルタント的。見ただけで何が言いたいか、よくわかる。

  • 第Ⅰ部 あしたの地域金融市場の見立て方
    • 第1章 人口減少は預貸ギャップを拡大し地方市場を蝕む
      1. 預金市場では人口減少と高齢化が影響を打ち消し合う
      2. 貸出市場は生産年齢人口とともに減少する
    • 第2章 社会移動の奔流は急速な市町村格差を促す
      1. 市町村間の社会移動はより大きな影響を及ぼす
      2. 社会移動は経済力が影響を与えている
  • 第Ⅱ部 あしたの地域金融機関のつくり方
    • 第3章 地域銀行の最終解は合併か独自モデルかの二者択一
      1. 預貸ギャップと資金利鞘の関係がコモディティ化を示唆している
      2. 銀行規模が営業経費を決める
      3. トップライン向上よりも合併によるコスト削減効果が勝る
      4. 「地域」銀行から本当の意味での「地方」銀行へ
      5. 2つの意味でアセット・マネージメント会社たれ
    • 第4章 信用金庫は個別の多様化とシステムとしての見直し
      1. 信用金庫も銀行業として同様の傾向を持つ
      2. 広域化しなければならない信用金庫のディレンマ
      3. 多様化を目指すのが信用金庫の本分
      4. 信用金庫システムとしての信金中央金庫のあり方
  • 第Ⅲ部 あしたの地域経済の育み方
    • 第5章 視点を変えた枠組み——ILO産業分類と7つの基本軸
      1. 顧客はどこにいるのか——ILO産業分類
      2. 地方版総合戦略の7つの基本軸
    • 第6章 アウトバウンドとインバウンドへ資源を振り向けろ——総合戦略策定検証
      1. 都道府県レベルでの地方版総合戦略を描く——北海道のケース
      2. 市町村レベルでの地方版総合戦略を描く——伊達市と網走市のケース
    • 第7章 地方創生に向けた自治体と地域金融機関への宿題
      1. 地方税データベース構築を急げ
      2. 地方創生における地域金融機関の役割は多い
      3. みんなでこの手法のポテンシャルを引き出せ
    • 補遺 本書を読むための手引き——バンカーのための「科学と科学史」についての随想