吉上亮『PSYCHO-PASS ASYLUM 2』

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫JA)

以前ノイタミナ枠で放送された深夜アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の小説版、その第2弾。執行官・六合塚弥生が(自身が執行官になってしまうきっかけとも言える)過去と向き合ったエピソード「About a Girl」と、監視官時代の宜野座伸元がアニマルセラピストによる〈動物の再導入〉事件を追った「別離」の2篇で構成されている。

前者の「About a Girl」の方が主要どころのキャラクターが多く登場するし、分量も多く、展開もダイナミックである。作者の気合いが入っている作品はこちらだろう。しかしわたしは小品と言って良い「別離」の方が気に入った。

動物の再導入というのは本作独特の概念で、人間の都合に合わせて長年遺伝子組み換えや交配が行われ、野生をスポイルされた動物を野生に戻すという試みが〈動物の再導入〉である。しかしこれまで散々野生をスポイルさせておいて、それはやっぱり間違いでしたと人里離れた山奥にポイッと放したからと言って、野生はそんなに甘くない。結局ほとんどの動物は生き残ることができず、また生き残った動物も放された環境の生態に組み込まれるわけではなく、(人間を恐れないから)人里に降りて悪さをするという、いわゆる害獣化してしまった。宜野座はドッグセラピストの資格を持っており、事件調査の傍ら、捕まえた老犬を引き取って保護することにした……という展開。とびきり美しく、そしてとびきり残酷な物語だ。これが眼前で実行されたら、わたしの色相も濁ってしまうだろう。