- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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しかし取り上げる題材がいちいち難しい。第6章なんて、
哲学と小説の言葉は根本的に異なるという話の続きです。
プラトンの『国家』から始めましょう。理想国家から詩人は追放されなければならないと主張した、というので有名ですが、当該の議論が……(略)
プラトンではなく、もう少し取っ付きやすい例でお願いします……。
なお著者はプラトン以外にも、『アガメムノーン』だのアリストテレス『詩学』だのチェスタトンだのウェルギリウス『アエネーイス』だのソルジェニーツィンだの、普通の人は存在すら知らないか、名前は知っていても読むまでは行かない古典を好んで引用している。実作検討も、最初の作例がユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』である。え?
広範な知識や理論武装を素直に凄いと思う一方で、何だろう、このモヤっとした感覚は。これで著者自身は「悪しき教養主義」や「尤もらしい教養主義」を批判しているのである。浅田彰や柄谷行人のような「カントやハイデガーくらい常識として読むべし」という教養主義と、高尚な文学に対するコンプレックスの二つを同時に押し付けられているような、独特の読後感である。