高野秀行『アヘン王国潜入記』

【カラー版】アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

【カラー版】アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

ミャンマー(ビルマ)のワ州というところで実際に生活して、どんな人たちがどんな風にアヘンを作っているのかを探ったルポルタージュ。この人の名前は以前から知っていたが、こんなに面白い本だったとは。アヘンがどんな風に作られているか、(地理上はビルマの中にありながら)ビルマ人のこともビルマの文字もビルマの紙幣も知らず独立国を標榜したワ州がどんなところだったか、そしてアヘンを吸うとどんな気分になるのか……本書を読むと、文化人類学的な知的好奇心がムクムクと頭をもたげてくる。

面白い!

今更ながら、この人の作品を色々と読んでみようかなという気になった。

なお、わたしのドラッグに関する知識は、アッパー系という気分を高揚させるものの代表格がコカイン、ダウナー系という気分をふにゃーっとさせるものが大麻(マリファナ)とヘロイン、あとアヘンはケシの実から作られ、大麻は文字通り麻ですね、という程度の知識しかなかった。しかし本書では、アヘンを生成することでヘロインが作られ、そこからさらにモルヒネが作られることなども説明されている。

ちなみにヘロインはドラッグの中でもトップクラスに危険なブツだとされているが、あっさりとアヘンにハマってジャンキー化していく著者の様子を読んで、ヘロインの原料たるアヘンもなかなかに危険なんだなーと認識を新たにした。アヘンは昔からある、いわば未精製のドラッグだということで、もちろん危険には違いないが、相対的にはそこまで危険なドラッグではないんじゃないかと思っていた自分がいた。しかし相対論なんて正直ほとんど意味がない。やれば、遅かれ早かれジャンキーになる。それがドラッグなのだろう。つまり依存性や毒性ということであれば、タバコやアルコールもそこそこ酷いドラッグというわけだ。筋トレでもして脳内麻薬を出しているぐらいが良いんだろうな。