ケン・リュウ『紙の動物園』

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

「アジア趣味」と「非ハードSF」が二枚看板の新興SF作家。

Amazonのレビューに、

全体的にウェットな作風。ハードSFの対極とでもいうのだろうが、技術や設定にはあまりこだわりを見せず、SF的シチュエーションやガジェットを使いながら、気持ちにぐっとくる作品。

とあったが、わたしも同じ感想を持った。ぐっと来るんだよね。

冒頭に収録された表題作「紙の動物園」と、その次に収録された「もののあはれ」は、読みながら涙を流していて、何とも言えぬ読後感。特に「もののあはれ」は、これを中国系アメリカ人(11歳まで中国で暮らし、その後アメリカで生活しているそうだ)が書いたかーと驚いたが、何と著者は『ヨコハマ買い出し紀行』にインスパイアされてこれを書いたらしい。物語を否定するようなあの作品にインスパイアされること自体が、非ハリウッド的というか何というか。