ケンドー・カシン『フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで』

フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで

フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで

ケンドー・カシンは現役プロレスラーでありながら早稲田の大学院に通い、その後大学非常勤講師になったのだが、別に教育論などを述べた本ではない。もう純粋に、ケンドー・カシンの半生をインタビュー形式で明らかにした本である。わたしはケンドー・カシンの大ファンなのだが、大ファンだけに「まともな本ではないのではないか」と懸念しながら購入していた。カシンの言動は非常に破天荒で、プロレス界きっての問題児と呼ばれているからである。しかし思っていたよりも真面目に語ってくれている。

とはいえ、そこはカシンである。真面目と言っても、どこか人を食っている。例えば、本書のインタビューの冒頭はこんな調子である。

――永田裕志選手の自伝は、永田さんが病魔と闘う少年を「俺も頑張るから、君も頑張るんだぞ」と元気づけ、その後、試合に負け続ける永田さんを、少年が「今度は僕が永田さんに勇気を与える板です」と励ましたという感動的な話から始まるのですが、カシンさんにはそういうかたはいないのですか?

 僕は永田くんと違って、そのようなファンには一度も出会ったことがございません。ただ、創作することはできますが?

――いえ、そういうわけにもいかないので……。

基本的にはケンドー・カシンのファン・グッズだが、色々あけっぴろげに語っているので、プロレスファンや格闘技ファン全体に薦めることもできるかな。極私的には必読。