つかいまこと『世界の涯ての夏』

世界の涯ての夏 (ハヤカワ文庫JA)

世界の涯ての夏 (ハヤカワ文庫JA)

「涯て」とは、唐突に世界に登場した異次元空間のようなもので(作中では「異時間」がどうこう書いていた)、まあ要するによくわからないんだけど放っておくと「涯て」が広がって世界が飲み込まれ、じわーっと滅びてしまう性質のものである。なので少しでもその拡張を押さえながら、でも今日明日に世界が滅びるわけではないので大体いつもどおり生きている、という世界線のSFである。

村上春樹みたく、チャプターごとに視点が切り替わり、異なるシチュエーションで物語が展開されるので、その意味では飽きさせない。また、そうした複数の物語が収束していく手際もなかなか良かった。けど、いかんせん地味だな。これを「静謐」とか言っちゃうのはちょっと違うと思う。面白かったんだけどね。