デロイトトーマツコンサルティング株式会社『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』

成功する!IFRS導入プロジェクト

成功する!IFRS導入プロジェクト

コンサルが書いたIFRS本。ひとつひとつの会計論点について細かく解説した本ではなく、業務対応・システム対応を含めて、どのようにIFRS対応プロジェクトと向き合っていけば良いかを解説した本。

以下、備忘。自分のためにつけるので、本書の網羅的な要約にはなっていない。

なお、IFRSプロジェクトでどんなことをやるのかを網羅的に知りたければ、とりあえず5章の目次をざっと眺めてほしい。それだけで、わかる人はわかる。

第1章 IFRS(国際会計基準)とは

P.14から引用。

 原則主義では、数値基準のような具体的なガイドが示されていないため、逆にそれらを逆手にとった適用回避行為が生じにくいといわれます。(P.14)

同じく、P.14から引用。

 結局、IFRSにおいては、どのような会計処理を行うかは会社自身が判断しなければならないのです。(略)今まで以上に会社と会計監査人は、企業活動において生じる事象の会計処理上の問題に対して、緊密に競技を行う必要があります。(P.14)

第3章 5W+1Hで考えるIFRS導入方針

連結パッケージの定義が曖昧なのでGoogleさんで検索して定義。「連結パッケージとは、連結決算を行うにあたって必要な情報を各子会社に入力してもらうための定型フォーマットのこと(主にエクセルファイル等で作成)。親会社は各連結子会社にこの連結パッケージを事前に配布し、あらかじめ決めた期日に回収してから連結作業を開始する。」

holdings-renketsu.com

renketsu.info

第4章 IFRS導入プロジェクトの必達ゴール
  • 連結範囲の見直し
  • 決算日の統一
  • サブ連結
  • 現地基準との両立
    • 現地基準で決算を行った後IFRSに組み替える or IFRSで決算を行った後現地決算に組み替える差分調整方式
    • 両基準による記帳を同時に処理する並行転記方式
第5章 IFRS導入プロジェクトの進め方

以下、本書の目次を引っ張ってきてます。これは役に立つ。

  • 調査・分析フェーズ
    • 【ステップ1】プロジェクト計画の策定
      • タスク1 調査スコープの決定
      • タスク2 フェーズ1の作業計画の策定
      • タスク3 プロジェクト組織の設計とプロジェクトメンバーの選定
      • タスク4 プロジェクト運営ルールの策定
      • タスク5 プロジェクトメンバーのトレーニング
      • タスク6 パイロット分析の実施
    • 【ステップ2-1】会計差異分析
      • タスク1 会計方針の差異抽出
      • タスク2 会計方針・手続きオプション案の検討
      • タスク3 開示項目の検討
      • タスク4 会計監査人との協議
    • 【ステップ2-2】財務報告インフラ影響分析
      • タスク1 業務・システム要件の整理
      • タスク2 影響する自社業務・システムの識別
      • タスク3 業務・システムの詳細な影響内容の検討
      • タスク4 対応施策案の検討と必要工数の概算見積もり
      • タスク5 他の関連プロジェクトに対する影響の把握
    • 【ステップ2-3】会計方針の仮選択
      • タスク1 会計方針・手続きオプションの比較検討
      • タスク2 会計監査人との協議
      • タスク3 財務インパクトの試算
    • 【ステップ3-1】IFRS導入方針の基本的検討
      • タスク1 重要課題の再整理
      • タスク2 スケジュール上の制約事項の整理
    • 【ステップ3-2】IFRS導入ロードマップの策定
      • タスク1 ロードマップの策定
      • タスク2 意思決定
  • 導入フェーズ
    • 【ステップ1-1】会計方針の決定
      • タスク1 会計方針の決定とポジションペーパーの作成
      • タスク2 会計監査人との協議
    • 【ステップ1-2】開示フォームの作成
      • タスク1 モデル財務諸表の作成
      • タスク2 CoA(勘定科目表)の作成
    • 【ステップ1-3】グループ会計方針のマニュアル一式の整備
      • タスク1 グループ会計方針のマニュアル体型検討
      • タスク2 グループ会計方針のマニュアルの運用ルール検討
      • タスク3 グループ会計方針のマニュアルの作成
    • 【ステップ1-4】連結パッケージの作成
      • タスク1 IFRS組換情報の定義
      • タスク2 連結パッケージの作成
    • 【ステップ2-1】システム構築
      • タスク1 新業務プロセスの定義
      • タスク2 改修が必要なシステムの特定
      • タスク3 システム改修・導入
    • 【ステップ2-2】決算体制構築
      • タスク1 IFRS決算体制の構築
      • タスク2 J-SOX対応
    • 【ステップ2-3】社内諸制度の整備
      • タスク1 社内諸制度のIFRS対応
    • 【ステップ3-1】トレーニング
      • タスク1 トレーニング方針策定
      • タスク2 トレーニング資料作成・体制構築
      • タスク3 トレーニング実施
    • 【ステップ3-2】グループ展開
      • タスク1 各社の目標到達レベルの検討
      • タスク2 検討ステップの策定
      • タスク3 各社ロードマップの検討
      • タスク4 進捗管理と各社への支援方針の策定
    • 【ステップ3-3】進捗管理
      • タスク1 各社の進捗状況の管理
      • タスク2 遅延会社へのフォロー実施
    • 【ステップ4-1】決算リハーサル準備
      • タスク1 実施方法の検討
      • タスク2 会計監査人との協議と実施要綱の確定
      • タスク3 決算リハーサル実施要綱の説明
    • 【ステップ4-2】決算リハーサルの実施
      • タスク1 財務諸表作成施行
      • タスク2 会計監査人によるレビューの実施
    • 【ステップ4-3】改善
      • タスク1 課題の識別
      • タスク2 課題の対応
  • 維持・改善フェーズ
    • 【ステップ1】各種インフラの運用開始
    • 【ステップ2】期首残高確定
    • 【ステップ3】並行決算
    • 【ステップ4】維持・改善
    • 【ステップ5】IFRS改訂への対応
第6章 システム整備の論点

P.187-188から引用。

 IFRS適用に際して、システム面で想定される大きな課題の一つに、会計システムにおける複数会計基準への対応があげられます。
 これは、会計システムにおいて中心的な役割を担う総勘定元帳システム(GL:General Ledger)や連結会計システムにおいて、日本基準(海外グループ会社の場合は各国基準)とIFRSの複数会計基準に基づく会計データを管理するということです。
 これまで第2章等で述べたとおり、現時点では、IFRS適用は連結財務諸表のみが対象となる可能性が高く、単純に考えれば連結対象会社の単体財務諸表は日本基準か各国基準で作成し、個社の単体財務諸表を連結時にIFRSに変換すればよいということになります(本書ではこれを「川下対応」という)。
 しかし、連結決算の早期化や業務の効率化といった観点を考慮すると、必ずしもこれが最も望ましい形態とはいえず、個社の単体財務諸表レベルでIFRSベースの財務諸表等を作成し、そのまま連結を行うべきである(本書ではこれを「川上対応」という)という考え方が導かれます。
 川上対応の場合には、企業はIFRSと各国基準の療法に準拠した個社の会計システムの仕組みを持つことが望まれます。
 具体的には、総勘定元帳システム上に各国基準とIFRSの複数帳簿データを保持し、個社の各国基準用帳簿からは各国基準の法定財務諸表が、IFRS用帳簿からはIFRS連結決算用の財務諸表がそれぞれ出力できるような仕組みが想定されます。(P.187-188)

P.189-194から引用。

 複数帳簿を実現するための仕組みを検討する際には、連結対象となる個社の会計システムだけでなく、親会社の連結会計システムも含めた企業グループ全体のアーキテクチャを俯瞰してとらえる必要があります。ここでは特に、以下に示す3つの論点から、アーキテクチャオプションを整理します。
 1つ目は、IFRS適用に際してグループ会社の会計基準を統一し、個社の帳簿データをすべてIFRSベースで管理するのか、あるいは個社の帳簿は日本基準等の各国基準のみで管理するのか、という論点です。
 これは、IFRS対応において「データ」の視点からファイナンスアーキテクチャをとらえた論点であるといえます。
 (略)
 個社の会計システムで複数帳簿を保持する場合、これら複数帳簿に対して日々のデータを、どのような方法で、どのタイミングで記帳するかにより、システム全体の処理フローや既存の業務システムとの連携方法が異なります。
 これは、IFRS対応におけるファイナンスアーキテクチャを「アプリケーション」の視点からとらえた論点であるといえます。
 (略)
 グループ会社の経理担当者が、IFRSベースでの会計処理や会計基準間の調整を個社のシステム上で行う場合には、そのために必要なシステム基盤を個社ごとに整備する必要があります。
 一方で、グループ会社は従来どおり各国基準での会計処理を行い、IFRSへの会計基準間の調整はSSC(シェアードサービスセンター)で集中的に行うといった方法も考えられます。
 この場合、川上対応なら個社(あるいは、グループ共通)の会計システム側にIFRS用の帳簿を保持し、オペレーションはSSCで集中的に行うといった運用が想定されます。川下対応なら、親会社の連結会計システム側にIFRS用の調整仕訳や注記情報を入力するための仕組みを構えることになります。(P.189-194)