月村了衛『機龍警察 狼眼殺手』

機龍警察 狼眼殺手 (ハヤカワ・ミステリワールド)

機龍警察 狼眼殺手 (ハヤカワ・ミステリワールド)

警察小説であり、群像劇であり、近未来SFであり、龍騎兵なるパトレイバー的な人型兵器が登場するロボット小説でもある人気小説シリーズの第5弾。

短編を含め、これまで主だった登場人物にはスポットライトが当たってきており、今度は誰だろうと思ったら、技術班の女性だった。でも、全員とも言える。とにかく、『踊る大捜査線』あたりとは比べ物にならないほど複雑な組織戦が繰り広げられている。個人的には傑作だと思った。第5弾にして、間延びするどころか、どんどん緊張感が高まっていく。面白すぎる。

しかし本作は、これまでのシリーズと比べても異色である。龍騎兵による格闘シーンが描かれていないのである。本シリーズは「警察モノ」であると同時に本来「ロボットモノ」であり、これは異色としか言いようがない。ここまで圧倒的な完成度を誇っているのに、意外にアマゾンの点数が低いのは、これが原因だろうな。言うなれば、パトレイバーの劇場版第3弾『WXIII PATLABOR THE MOVIE3』みたいな位置づけなのである。