榊巻亮『世界で一番やさしい会議の教科書』

世界で一番やさしい会議の教科書

世界で一番やさしい会議の教科書

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズというIT系コンサルファームが書いた本。この会社はIT系なのに(いや、IT系だからこそ、なんだが)ファシリテーションに着目しており、個人的には非常に興味深い会社。

本書は、入社2年目のペーペーがどうやってファシリテーションを導入していくかという本なのだが、これはかなり実践的である。わたしのようなミドルのコンサルタントでさえ、クライアント先では自然にファシリテーションできても、社内でワーワー好き勝手言う人達を前にファシリテーションすることは難しい。そのような中、本書は「確認するファシリテーション」「書くファシリテーション」「隠れないファシリテーション」「Prepするファシリテーション」の4段階で解説している。若手はとにかく「確認するファシリテーション」だけでも効果十分である。確認するファシリテーションも実はけっこう難しくて、リズムや空気を読まずにいちいち止めていたら、会議参加者としてはかなりウザい。だから本書が言うように「わからないので確認させてください」とか「議事メモを書くために復唱させてください」みたいな、かなり慎重な入り方が必要である。本書はその辺の勘所をきちんと押さえてくれている。

その他、個人的に気になったポイントとして「課題解決の五階層」というフレームワークがあったのでメモ。これは、議論が噛み合っていない時は、そもそもの議論のレイヤーがズレていることが多く、その場合、下の階層のレイヤーから順に認識を合わせておく必要がある、という指摘である。

  • 5 効果 どの施策が効果が大きいのか?
  • 4 施策 どんな解決策があるのか?
  • 3 原因 なぜそれが発生するのか?
  • 2 問題 具体的にどう困るのか?
  • 1 事象 何が起こっているのか?

繰り返しになるが、ポイントは、単に議論の階層を合わせるというだけではなく、下の階層から順に認識を合わせておくということだ。1, 2, 3の認識を合わせて、初めて4の建設的な議論ができる。これは何となくでは理解していたが、フレームワークとして提示されると「なるほど」という発見がある。良いフレームワークだと思う。

その他、会議の目的別プロセスチャートというのも、ファシリテーションに慣れていない方には参考になるだろう。会議は「A. 報告」「B. 情報収集」「C. 承認」「D. 方針検討」「E. 課題解決」の5つがあり、それぞれ(導入で終了状態と進め方確認を行い、最後に決定事項やToDoの確認をする点では同じだが、その間の)ステップが異なるというものだ。

  • A. 報告:報告→Q&A
  • B. 情報収集:背景説明→欲しい情報の枠組み提示→ヒアリング
  • C. 承認:承認依頼事項の説明→承認事項説明→Q&A→承認判断
  • D. 方針検討:背景説明→選択肢の洗い出し→絞り込み基準の合意→評価・取捨選択
  • E. 課題解決:事象の確認→困りごとの確認→原因の分析→解決策の洗い出し→絞り込み基準の合意→評価・取捨選択

こうして見ると、Eのタイプの会議の進め方は、先ほど紹介した「課題解決の五階層」とほとんど同じだとわかる。