蔭山克秀『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』

経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる

経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる

近代経済学の扉を開けた、神の見えざる手で有名なアダム・スミス『国富論』から、マルクス『資本論』やピケティ『21世紀の資本論』まで、経済学の名著50冊を軽妙な語り口で解説してくれた本。

本書には良い点と悪い点がひとつずつあり、それは表裏一体である。すなわち、「50冊でざっと学べる」と言っても、その解説のレベルに差がありすぎることだ。ちゃんと解説してくれている本が大体半分ぐらいなのだが、その解説は親しみやすく、知りたいことがすっと頭に入ってくる。一方、手抜きをしている残りの25冊については、せいぜい数ページで「とりあえずぜひ読んでみてください」レベルの解説も散見される。

例えば第1章だけを見ても、アダム・スミスの『国富論』における主要キーワードや経済学史全体における位置づけとか、ワルラス『純粋経済学要論』における古典派(生産と分配)と新古典派(交換)の違いとか、ケネー『経済表』における重農主義の説明とかは、スーッと頭に入ってくる。一方、ロック『統治二論』やサイモン『経営行動』はネットで検索したら出て来るレベルの解説で、サミュエルソン『経済学』に至っては「これは全世界で1000万部も売れた本で、数式を使ってないのでわかりやすいです」というAmazonのレビューらしきものが数ページほど載っているだけである。この辺は絶対読んでないか理解してないなーと思うし、さすがに金を取るという点からするといかがなものかと思う。

概念よりも、作者や書籍の単位で解説するというのは、なかなか読み手としてはスッと頭に入りやすく、コンセプトとしては「アリ」なのだと思う。それに全体としては良かった。50冊にこだわらず、25冊とか30冊ぐらいをがっつり解説し、残りは削除するか、章と章の間のコラムみたいな形にしてもらえると、読み手のもやっとした不満も発生せず、良かったのではないか。