- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/06/30
- メディア: Kindle版
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天冥の標という作品は、そもそも第Ⅰ巻がいきなり29世紀(西暦2804年)で、訳のわからない世界観を手探りで読んできて、ものすごいどんでん返しがあり、第Ⅱ巻はいきなり「物語」の「始まり」である西暦2015年に戻る、というアクロバティックな展開で幕を開けた。そして第Ⅶ巻でメニー・メニー・シープの世界観が明らかになった。いわば第Ⅰ巻の前日譚である。そうなると、第Ⅷ巻ではついに第Ⅰ巻のラストの「その先」が描かれる……と思っていたのだが、実は第Ⅰ巻をイサリやラゴス、カルミアンの立場から描き直したものが第Ⅷ巻である。その意味では正直「肩透かし」を食らったのだが、読み進めるうちに、これは良い意味での「肩透かし」だったのだと思い直した。このブン回しぶり凄いだろ。なぜ今イサリがいるのか、なぜ第Ⅰ巻でイサリは猛獣のように見られていたのか等、「あっそういうことね」が何十個も出てくる。
もうね、あらゆるところにあらゆる伏線があって、ただただ「凄い」としか言いようがない。