インキュベ日記

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北野唯我『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

人材ポータルサイトを運営している会社の人が書いた転職方法論。わたしはこの手の人達(他人のキャリアで飯を食っている人達)が必ず言う「マーケットバリュー」という言葉が嫌いなので、最初は正直「うーん」と思ったが、よく読むとわたしの考えにも近く、また教わることも多かった。

  1. 自分の「マーケットバリュー」を測る
  2. 今の仕事の「寿命」を知る
  3. 強みが死ぬ前に、伸びる市場にピボットする
  4. 伸びる市場の中から、ベストな会社を見極める

とりあえず目次を元にこの方法論を4つのステップで書き出したが、最大のポイントはマーケットバリュー云々ではなく、3つ目の「強みが死ぬ前に、伸びる市場にピボットする」という点である。

余談(後でまた本題に戻ります)

例えば、わたしは今コンサルティング業界で働いているが、コンサルティング業界そのものは死なないと思う。なぜなら日本の労働法の制約上、人的資源を「持つ」ことはリスクだからである。日本は解雇規制が強く、一度雇ったらそう簡単には辞めさせられない。その時々で企業が取り組みたいテーマを推進できる人材を1から10まで揃えるとなると、人件費が高騰するし、基盤整備が終わってオペレーション段階に入った後も雇い続けなければならない。しかも一時の人余り状態ではなく、人不足状態に移行している。もっと言うと、成果を出せる優秀人材が極端に不足しており、彼らを正社員として雇おうとすると今かなりのコストが必要な状態になっている。そうすると、企業の外部に専門スキルや問題解決経験者がおり、必要に応じて雇い入れるという仕組みは、日本の本質的な労働実態に沿っている。*1

ただ、ここからが重要なのだが、今後コンサルティングの形は変わるのではないかと思っているし、そもそも過去から現在にかけてコンサルティングの形は変わっている。

例えば、そもそも我々どうすれば良いですかねといった先生に教えを請うような、もっと言うと机上のアドバイスだけを欲しがる会社というのは、大前研一や堀紘一が現役だった頃の時代に比べると、劇的に減っている。純粋な戦コン(戦略コンサルティングファーム)が減ってきたと言い換えても良いだろう。その理由としては、戦略だけ立てても実行されない紙クズが多かったというのもあるし、そもそも戦コンで秘匿されてきたフレームワークがMBA本で簡単にゲットされるようになってきて、ノウハウ自体がコモディティ化してきたというのもある。いずれにせよ、昔の戦コンは、企業の方向性を紙にまとめておしまいだったが、今、近年の多くの戦コンは、P/Lに直接的にヒットするものは戦略コンサルティングなのだと定義を拡大してコスト削減プロジェクトを(伝票をわさわさチェックするのを含めて)積極的に請け負ったり、実行フェーズまで関与することを標榜したりしている。

わたしがコンサルティングビジネスの今後の変遷として強く意識しているのは、データアナリティクスやRPA、各種FinTech等、「ソリューション」を知らなければ企業変革ができないという点である。方法論だけではない、具体的な製品を含めたソリューションという意味だ。業務の自動化が必要です、アウトソーシングが必要です、無人店舗が云々、と語ることは簡単なのだが、じゃあ具体的にどうやるのと聞かれた際、机上の空論では話にならない。具体的なソリューションを製品含めて持ってこられることが必要ではないかと思う。そうすると、コンサルタントの役割は商社のような役割に近くなるのかな、とかそんな風に思っている。

本題に戻って

閑話休題。自分の強みがコモディティ化する前に、新たな強みを探し、以前の強みと掛け合わせて自身の新たなウリとする。これが「強みが死ぬ前に、伸びる市場にピボットする」ということだと理解した。単にAIビジネスに飛び込んでみましょうではないのである。ただ、「伸びる市場」というものは重要だろう。コモディティ化したビジネスで歯車として働いている限り、よほどその業界が好きでなければ、やりがいを見つけるのは難しいように思う。

この本、人気があるので図書館で予約して、半年以上待ってやっと手に取ったのだが、なかなか良い本だと思った。自分で買い直そうかな。

*1:コンサルティングの本場である米国は、日本とは違った意味で、コンサルティングが必要とされ、なくならないだろう。米国は随意雇用という考え方であり、要らない人はすぐ切れるため、日本企業と違って基本的に余剰人材はいない。また、ジョブ・ディスクリプションにより定められた職種を超えた活動をやらせることはできない。そのため、新しい取り組みをしようとすると、外から人を引っ張ってこなければならないのである。