- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/09/26
- メディア: 単行本
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そう、『Iの悲劇』とは「Iターンの悲劇」のことである。
とはいえ、米澤穂信なので、ただの仕事小説ではない。「よっしゃ殺人が起きたので事件でも解決しますかな」といったタイプのミステリではなく、読んでいく中で「そういったことだったのね」と驚かせるタイプのミステリを得意とする。それを日常の謎と呼んでも良いし、ある種の叙述トリックと呼んでも良いが、とにかく読者に衝撃を与える構成力は見事なものだと思う。
本作もそうだ。
移住者のトラブルとそれに振り回される小役人の主人公、愚痴のひとつもこぼしたくなるよね……という構図だと、まあテレビドラマとしては面白いかもしれないが、米澤穂信のミステリとしては不適格だろう。そう思っていたが、少なくともそうではない。少なくともわたしは2回、衝撃を受けた。
実は本書で、米澤穂信の小説は(おそらく)全て読んだのだが、これもなかなか面白いし、何より読みやすい。