RJラボ『エッセイの書き方 公募で賞が獲れるおもしろい文章の秘密』

エッセイの書き方: 公募で賞が獲れるおもしろい文章の秘密 (RJ Books)

エッセイの書き方: 公募で賞が獲れるおもしろい文章の秘密 (RJ Books)

  • 作者:RJラボ
  • 出版社/メーカー: 株式会社RJ
  • 発売日: 2015/03/24
  • メディア: Kindle版

本題に入る前に

最近Amazon Kindle Unlimitedを使い始めた。ラインナップは「そこそこ」という感じかな。本も漫画も手に取りたいと思える本が正直少なく、もう少し頑張ってくれよと思わなくもない。しかし月額980円なら、月に1〜2冊でも読みたい本・漫画に出会えれば御の字だということで使い始めることにした。また、個人出版の電子書籍(インディーズ)は当たり外れも大きく、以前から買って後悔することが多かったので、こういうのをAmazon Kindle Unlimitedで読めるのは嬉しい。これから活用していこう。

本題

本書もいわゆる個人出版の電子書籍で、Amazon Kindle Unlimitedの対象だ。文章作法や小説の書き方を指南した本は数あれど、エッセイに特化した本は寡聞にしてあまり聞かない。ちょっと気になり手に取ってみたが、悪い意味で参考になったし学びが多かった。そしてAmazon Kindle Unlimitedは良いなと。金を出して後悔するリスクが減らせる。

ざっと目次を説明すると、「まえがき」があって、第1章が「題材の扱い方とテーマ」、第2章が「実例とその応用」、第3章が「エッセイらしい文章表現」、第4章が「さまざまなテクニック」、第5章が「文体と視点」になる。第1章の目次だけもう少して見ていこう。

  1. 「働く女性」についてのエッセイ
  2. 結論はいらない
  3. 会話ではじめるのは小学生レベル
  4. 受賞する確率が高い内容
  5. 資質に合ったジャンルを選ぶ
  6. 目的によってテーマの方向性が決まる
  7. できるだけ具体的に語る
  8. 真ん中から後半にメインを持ってくる

もうこの時点で、「あ、この本は構造的に書かれたものではないな」というのがよくわかる。各章のタイトルを見回すだけでも、第2章にいきなり作例かよというのもピンと来ないし、第3章の文章表現と第5章の文体が重複しているし、第5章の視点は第4章のテクニックに何故含まれていないのかも不明。第1章の各項目も、おっさんが居酒屋で思いついた内容を思いついた順に喋っているような感じで、レベル感が全く揃っていない。

誤解していただきたくないのは、構造的に書かれていない本だから即悪いというわけではない。この作者には実際ちゃんとしたノウハウがあり、この本にも役立つアドバイスがちゃんと書かれている可能性もある。しかし構造的に書かれていないものは、その判断が極めて難しいのである。極論、頭からお尻まで全部読まないと、知りたい内容が書かれているのかどうかがわからない。拾い読みも出来ないし、途中で読むのを止めた後「もしかしてもう少し読み進めたら知りたい内容があったかもしれない……」といつまでも気になってしまうリスクもある。

もちろん仕事のプレゼン資料ではないので、わたしも5W1Hとまで言うつもりはない。しかし金を取るなら、最低限エッセイにおけるWhat(何)とHow(どのように)は読み手にわかりやすく示されているべきではないのか。まずWhat、つまり著者にとってエッセイとは何であるかを明確に示してほしい。エッセイは日本語に直訳すると随筆や随想と呼ばれるが、それはコラムや評論・日記とは何が違うのか。天声人語は一般にコラムと称されるがエッセイとは違うのか。ブログやSNSで徒然に書かれる文章はエッセイなのか違うのか。そして「公募で賞が獲れる」とあるが、具体的にどんな賞があり、どの辺が狙い目なのかも明確にすべきだろう。次にHow、つまりエッセイ技法も(さっき気になる点は挙げたので再掲は控えるが)もう少し体系的に書けるだろう。

まあ個人出版だと編集者がいないので、こういう読み手側に立った感想が見えづらいのかもしれない。

しかし、例えば本書と同時期にゲットした個人出版の電子書籍である、あい あおい『「これが書けたら死んでもいい」と思える小説のつくりかた』は非常に構造的な書かれ方をしており、本書とは対象的である。

ただ、そちらの感想は明日に回そうと思う。