都留泰作『ムシヌユン』1巻

ムシヌユン 1 (ビッグコミックス)

ムシヌユン 1 (ビッグコミックス)

主人公は昆虫がとにかく好きで、昆虫博士になりたいという夢を叶えるため、上京して東京の大学に通い始めた……ところまでは良かったが、昆虫博士になりたいという思いばかりが先走って上手く行かない。机にかじりついて毎日毎日ものすごく勉強するんだけど、「勉強」から、魅力的な「研究計画書」に昇華させられない。そして極度のコミュ障なので、教授に研究の価値を伝えることもできない。その結果、5回目の院試に落ちて仕送りも止められて家賃も払えなくなった主人公は、夢破れて泣く泣く故郷の(といっても小3から小6までしか住んでいなかった)日本最南端の島・与那瀬に戻ることになる。
で、いざ与那瀬に戻ってくると、物凄い数の人がいる。お勉強ばかりしていた主人公は知らなかったが、世界は今、1ヶ月前に突如登場した天体現象(通称タンゴ星団)を見るために与那瀬はお祭り騒ぎとなっていた。本来タンゴ星団は南半球でしか見ることができない巨大球状星団なのだが、与那瀬は日本で唯一、タンゴ星団の全体像がギリギリ見られるポイントであり、その全体像を、まさに明日から拝めることが出来る。そんな絶妙のタイミングで、主人公は与那瀬に戻ってきた……と、こんな感じのプロローグ。
このコミュ障の主人公の振る舞いはリアル過ぎ&キモ過ぎで、しかし院試に落ち続けるという設定が他人事とは思えず、どうにも目が離せない。キャラで引っ張っていくタイプの漫画なのかと思っていたが、SFとしてもスケールがデカく、良い意味でハッタリがきいている。そして今後の展開が全く読めない。
前作にしてデビュー作『ナチュン』の頃からキレのあるSFを描いているなと思っていたが、この人は漫画家にして文化人類学者でもあるらしい。どうりで目のつけどころが違うなあ。
2巻も大期待!