雁須磨子『こくごの時間』

教科書に載っていた8つの作品をベースに描くオムニバス・ストーリー。

その8つの作品とは、石川啄木「十五の心」、神沢利子「くまの子ウーフ」、太宰治「走れメロス」、吉野弘「夕焼け」、大岡信「言葉の力」、志賀直哉「小僧の神様」、中島敦「山月記」、ヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」である。メロス・山月記・夕焼け・山月記・少年の日の思い出は中身まで覚えているけれど、十五の心・ウーフ・言葉の力は覚えてないなあ。ウーフに至っては存在すら覚えていない。

でも原作を覚えていなくとも、このオムニバスは面白い。特に吉野弘「夕焼け」と大岡信「言葉の思い出」の奴が良いね。前者は、体調が悪いにも関わらず満員電車で席を譲ってしまった女子学生と、それを見てしまった親切なサラリーマンの物語。後者は、木の絵を描くのが好きなシャイでオタクグループに属する男子高校生と、彼のことが何となく気になって声をかけてみたギャル系の女子高校生の物語。前者は詩の内容と漫画のストーリーが被っているが、後者は(詳しい内容は全く覚えていないが)そもそも評論だし、これが漫画のストーリーとどう絡んでいくのか……と考えていたら凄く楽しめた。