理不尽な孫の手+フジカワユカ『無職転生 異世界行ったら本気だす』1巻

最近は「なろう小説」「なろう系」というのが流行っているらしい。Wikipediaでは以下のように定義されている。

2014年ごろから、本サイト出身のライトノベルなどを総称して「なろう系」と呼ぶ動きがメディア等で出つつある。ただし「なろう系」と呼ばれる作品・レーベルでも、必ずしも本サイトに掲載された作品だけとは限らない。
一般的に「なろう系」の作品は「オタクの「満たされない」欲望を擬似的(安易に)に「満たして」くれる作品」と定義される。具体的には「現代社会で生活する平凡な主人公がファンタジーな異世界に放り込まれ、活躍する」というタイプの作品を指すことが多い。「なろう系」を好む読者の傾向としては「(主人公が)努力すると感情移入ができない」という意見が多いという。

要は、上で引用したように、元々「今の世界」で生きてきた人間が、剣と魔法の中世ファンタジー世界で生きていく……というのが基本的な構造である。そこに、ファンタジー世界への移動の仕方(例:総体としての人間が丸ごとテレポートするのか、記憶だけを持って生まれ変わるのか、今の世界の記憶がないまま体と人格だけがテレポートするのかなど)や、行った後の活躍の仕方(いきなり剣や魔法の優れた才能を持って好き放題、今の世界の知識を使って活躍、いきなりファンタジー世界ではモテモテなど)で、細かくジャンル分けされているらしい。大体が、今の世界で獲得した知性や記憶をそのまま持っているので、「強くてニューゲーム」「2週目」などとも呼ばれているようだ。

本作は、30歳を超えてニートとして生きてきた主人公が、最後にリア充を助けて車にはねられて死んだ後、ファンタジー世界の赤ん坊として今の記憶を持ったまま生まれ変わる。現代社会での生き方には後悔していたので、その失敗を繰り返さないよう、この世界では幼い頃から努力しよう……とまあ、そういう話である。わたしを含めた普通の人は「最初から今の世界で努力しろよ」と思うので、正直あまり感情移入はできないのだが、けっこう面白い。今「あまり感情移入はできない」と書いたが、わたしにも多かれ少なかれ、そういう願望があるのかもしれないな。