石川雅之『惑わない星』1巻

惑わない星(1) (モーニング KC)

惑わない星(1) (モーニング KC)

『もやしもん』で大ブレイクした作家の最新作。

「ゴミ」をロケットで宇宙に捨てようという無責任な行為が、何度目かの打ち上げで失敗して以来、地球は完全に汚染され、人間はわずかなシェルターの中で暮らすしかなくなっていた。日本は、はるか昔に知恵も技術も教育も捨て、萌えとフィクションで食っていくと決めた国である。現実から目をそらすと決めた国である。最大の輸出産業であるアニメ関係の仕事を初めとしたわずかな人々は「内」で働けるが、その他大勢は「外」に働きに出ざるを得ない。「外」は「内」を繁栄させるための役割である。そして人類は、汚染され尽くした地球が浄化するまでの間、シェルターの中で生き延びる、いわば次代に「繋ぐ」だけの役割を課せられている。大半の動植物が死に絶え、空の色も失われた今、地球が浄化するかどうかも、浄化したとして地球が元に戻るかどうかもわからない。しかし主人公も、主人公の両親も祖父母も、そのまた祖先も、「繋ぐ」ことで、人類は何とか生き延びている……まあ一言で書けばいわゆるSFということになるのだが、なかなかにハードな世界観である。

さて、そんなハードな世界観の近未来の地球で、主人公のS沢は、宇宙に手紙を送信するという仕事に就いている。ロマンチックな響きを持つ仕事だが、これまで返信が来たこともなく、実際は退屈なだけの仕事だ。しかしふとしたキッカケで送った手紙が本当に宇宙に届き、地球の危機に、水星や金星・火星といった惑星たちが駆けつけてくる……というのが本作のアウトラインである。何のことやらという感じだが、『もやしもん』では菌が擬人化されていたが、本作では何と「星」が擬人化されているのだ。美少女の姿をした「星」が主人公の下を訪れ、地球を何とかしようと言っているのである。

世界観があまりにもヘビーで、でも星が擬人化されているわ、衛星(いわゆる月)は『もやしもん』の菌そのものだわで、ギャグなんだかシリアスなんだかよくわからない読後感になっている。何はともあれ続きは読みたい。どう決着をつけるのかな。