ヤマシタトモコ『花井沢町公民館便り』1巻

花井沢町公民館便り(1) (アフタヌーンコミックス)

花井沢町公民館便り(1) (アフタヌーンコミックス)

架空の町・花井沢町を舞台としたSF漫画。

2055年(前後?)の近未来SFなのだが、この花井沢町というのが結構特殊で、シェルター技術の開発事故に巻き込まれた結果、生き物だけを通さない「見えない膜」に町ごと覆われてしまっている。中の人は外に出られず、外の人も中に入れない。ただしモノは移動できる。だから中に閉じ込められた人は、配給や、給付金などで生活しているが、ネットを活用して自分で稼いだり、ネット通販で外のものを買ったりもできる。中の人たちだけで結婚して子供を産むことも不可能ではないが、様々なインフラは整っていないし、何十万人もいるわけではない(花井沢町という町ひとつ分)ので、数十年後か、数百年後か、いずれ「中」の人はいなくなる……なかなかどんよりと重い設定である。

ヤマシタトモコという漫画家は、人物の動きを描くのは下手だが、独特の設定を考えたり、人間関係の機微や感情を表現したりするのはめちゃくちゃ巧いと思う。この作品も、重いんだが、面白い。