長田悠幸+町田一八『シオリエクスペリエンス ジミなわたしとヘンなおじさん』9巻

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 9巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 9巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)

地味なだけの高校教師(女)が、「27歳までに伝説を残さなければ死んでしまう」という呪いというか契約というかを結んでしまい、はみ出しものの教え子たちと「伝説」を作るためのバンドを組む……というアウトラインの漫画。都合良く「伝説」なんて作れないよねという現実味と、それでもその瞬間ではけっこう周囲の人たちの時間を奪っちゃったりして、その何とも言えない描写が凄く刺さる。

しかし9巻は、既に吹奏楽のトランペットのエースである女の子を引き抜こうとしており、これは正直どうかと思った。人にはそれぞれ色んな戦い方がある。相手の土俵を突き崩して自分の利得を得るというのも、戦い方のひとつではある。しかし仮にも教師なら、相手を尊重してナンボではないか。自分のバンドに入れたら良いかもなーというだけの理由で吹奏楽という団体競技を危機に陥れようというアプローチには全く共感できず、一気にテンションが下がってしまった。確かに、吹奏楽部のエースを引き抜いたらバンドとしては良い音が作れるかもしれない。しかし残された吹奏楽部員と先生はどうなるのか。

自立しろ? 演奏の醍醐味はハーモニーなのに、今さら最も重要なソロパートのピースをむしり取られた吹奏楽部の皆はそんなこと言ってられないよね。

ロッカーとはエゴな奴らである? しかしエゴというのは自分の思いを突き通すことであり、他人を陥れて不幸にすることではない。

まあ要するに、わたしは吹奏楽部のエースの戦い方も好きだし、顧問の戦い方も好きなのだ。繰り返す。人にはそれぞれ色んな戦い方がある。

うーん、10巻はどうしようかなあ。