恵三朗+草水敏『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』13巻

フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(13) (アフタヌーンコミックス)

フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(13) (アフタヌーンコミックス)

世にも珍しい「病理医」を描いた医療ドラマ。

いわゆるジャンル漫画としては、最近は「料理漫画」や「なろう系」がブームだが、昔から一貫して人気があるのは「医療漫画」である。主人公が天才医師だったり研修医だったり獣医だったり医大生だったり薬剤師だったりとバリエーションは豊富だが、やはり医療というのは生死に直結する場面も多い。つまり、簡単に、と言っては大変失礼だが、少なくとも読み手に違和感を感じさせない程度には、他のジャンルよりも多くの「人間ドラマ」や「クライマックス」を埋め込めることができる。それが人気の源泉なのだろうと思う。

その意味では、この病理医という存在は基本的に患者と対面しない。だからそういう盛り上がりを演出するのは難しいはずなんだが、色々とその辺工夫しながら巧く読ませてくれている。

13巻では腎移植という、これまた超弩級に重いテーマを持ってきた。どんな最新技術と設備でも、未だに超えられない「腎臓」という臓器の機能。しかし複雑であるが故に、一度不調になると、なかなか辛い。人工透析なんかは本当に大変だろう。だから当然、腎臓の移植というアプローチが出て来るわけだが、本作では、生体腎移植・死亡腎移植に続き、何年か前まで病気だった方の腎臓を貰うという病気腎移植というテーマをブチ上げている。過去にガンを患った方の腎臓を移植して、移植された方もガンになると辛いものがある。だからガン完治後最低5年は移植をしてはならないというガイドラインがある。しかし5年より早く移植をした場合どの程度の危険があるのかはわからない。ガイドラインだから駄目だというだけだ。しかも、そもそも腎臓の提供者の数は圧倒的に不足しているわけで、運良く親族が腎臓を提供してくれて適合者がいますという場合も、腎臓の提供者が年配の場合はあまり待っていられない。また、患者が今「透析なし」で治療をしているが、もうすぐにでも人工透析を始めねばならないという状況の場合、臓器提供者がすぐ近くにいるなら人工透析ではなく腎移植にすがりたいだろう。これらの複雑な状況を踏まえ、本作の主人公たちは元ガン患者の腎臓移植に踏み切るわけである。

安定作なので最近はテキトーに感想を書いていた作品だが、改めて1巻から読み返すと、とてつもなく面白い作品だ。

14巻どうなるかな。