木多康昭『喧嘩稼業』12巻

喧嘩稼業(12) (ヤンマガKCスペシャル)

喧嘩稼業(12) (ヤンマガKCスペシャル)

  • 作者:木多 康昭
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: コミック
著者の木多康昭は元々、過激な下ネタや毒舌・パロディ・ブラックジョークを売りにしたギャグ漫画家である。特に実在するタレントや他の漫画家を過激にイジることが多く、歴代の週刊少年ジャンプ作品の中でも屈指の異色作『幕張』、そして週刊少年マガジン移籍後の『泣くようぐいす』『平成義民伝説 代表人』のいずれも、あまりにも過激すぎてクレームが入ったり編集部チェックが厳しくなったりする。その結果、当初の設定やキャラが「なかったこと」になる、連載版からコミックス版に際して大幅な描き直しや削除が入る、描きたいことを描かせてもらえない、等の問題を引き起こし、どれも打ち切りに近い形で終了してしまう。

しかしその後始まった『喧嘩商売』は、過激さは残るものの、過激なイジりは脇役が繰り広げるサイドストーリーという体裁にすることで、何とかメインストーリーが破綻せずに進行。その続編『喧嘩稼業』ではメインストーリーに絞って話を展開し、過激なイジりは主に巻末の作者あとがきだけになっている。過激なギャグ漫画家が、自らの過激さと何とか折り合いをつけた事例ということになるのだろうか(笑)

ただ、この木多康昭という人は、作風は過激だが、絵柄は繊細だししっかり描き込みをするなど、相当しっかり働いている漫画家であるとも思う。そのため休みがないことの不満を作中や巻末のあとがきで度々語っており、近年は不定期連載となっている。ただまあ、不定期連載だけど定期的にコミックスを出してくれているので、その点は凄いと思う。鶴田謙二や三浦建太郎・冨樫義博に比べたらかなり頑張っている。まあ冨樫義博に至っては最近「描いてくれるだけでありがとう」という境地に至っているので、この人も悪くはないか。

さて、前フリが長くなったが、12巻は作中屈指の実力者として描かれるフルコンタクト空手・進道塾の上杉均の試合がメインである。進道塾や上杉均はメインストーリーに深く関わっているので必ず勝つだろうが、対戦相手である、余命1年の末期ガンでありながら生涯最後の戦いとして大勝負に出た合気道の達人・芝原剛盛が格好良すぎて実に痺れる。主役を食う勢いというのはまさにこのことであろう。

早く13巻が読みたいが、まあ1年は待つだろうな。