阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』

阿刀田高の教養エッセイシリーズは全て面白い。阿刀田高は最初から順序立てて包括的に説明したりはしない。阿刀田高の教養エッセイは、エピソード単位で、面白いエピソードだけを取り出して語って聞かせてくれるのだ。ついつい「順序立ててわかりやすく説明する」入門書を最もスタンダードかつ役に立つ入門書だと思ってしまいがちだけれど、もちろんそれは一長一短でしかなく、興味を抱くという観点からすれば、「面白いものを見せてやる」という阿刀田高のような見せ方の方が「入門書」の本質に即しているのではないか――と思ったりもする。

それにしてもギリシャ神話の神々は人間じみている。特にゼウスは凄いよ。浮気しまくりのヤリまくりの子供はらませまくり。しかもゼウスの得意技は「気づかないうちにコトを済ませる」という、神様とは思えないほどのセコさである。動物に化けて何気なく近づき、「あら美しい白鳥ね」なんて女神が動物と戯れている間にコトを済ませてしまったり、窓から差し込む月の光になって、「まあ月が綺麗だわ」なんてやってるうちにコトを済ませてしまったり……ホントどうしようもない神様だなオイ! 思わず「神の力をそんなことに使うなよ!」とツッコミたくなるけれど、そこに何とも言えない「おかしみ」や「親近感」があるのも確かである。人間味に溢れているところは、西洋の神々ながらキリスト教やイスラム教よりは日本の神々に似ているね。

一神教は西洋で、多神教は東洋みたいな乱暴な分類はよく見かけるが、ギリシャ神話は明らかに多神教だし、仏教はそもそも仏だよねとか考えると、単純な分類というのは功罪あるなーと思ったりもする。