阿刀田高『アラビアンナイトを楽しむために』

昔々あるところでは、女に裏切られたことのある国王が、毎晩のように処女を呼び寄せてナニかしらやらかしたあと、朝になれば女を殺してしまう、なんて所業をやらかしていた。しかし大臣の娘シャーラザッドは国王に面白い話を聞かせたために、国王は続きが気になって殺すに殺せない。結局シャーラザッドは千と一夜ほど生き長らえて、ついには国王も生まれた子供のためにシャーラザッドを殺すのを止めて、めでたしめでたし――『千夜一夜物語』のアウトラインは大体こんな感じである。つまり、かの有名な「魔法のランプ」や「アリババと40人の盗賊」は、シャーラザッドが話した数多の物語の1つに過ぎないのだ。俺は「魔法のランプ」と「アリババと40人の盗賊」の話しか知らなかったし、そうした物語構造のことも初めて知ったが、他の人もアラビアンナイトの詳しいことは意外と知らないんじゃないだろうか?

本書もまた昨日に続いて阿刀田高の作品だが、本当に阿刀田高は入門書を書かせたら巧い。阿刀田高は面白くてキャッチーな部分だけをピックアップしてくれているんだから、面白くないはずがない。もう阿刀田高には本業のミステリーなんか止めちゃって、古典の入門書に専念してもらいたい……と言ったらミステリーファンは怒るだろうか。まあ俺はミステリー読まないから、それでも全然OKだけどね。