ポール・ストラザーン『90分でわかるマキアヴェリ』

俺の大好きな「90分でわかる哲学者」シリーズ第8弾。

プラトン・ニーチェ・デカルト・ヴィトゲンシュタイン・カント・キルケゴール・サルトルと続いて、第8弾(本書)は驚くことにマキアヴェリだ。そもそもマキアヴェリのことなんて俺は『君主論』の著者ってこと以外は何も知らないのだが、彼は本当に「哲学者」なのか? 何か今までとは系統が違うなあ……と思いつつ読んでいくと、やはりマキアヴェリは他の哲学者と一線を画している。彼の哲学は「政治哲学」である。閃光のような輝かしい理論はないが、どこまでもリアリストだ。

で、かのムッソリーニが耽溺したといわれる『君主論』は、やはり「危険」だった。君主は、もちろん民衆に愛されないよりは民衆に愛された方が良い。けれど、愛されると同時に怖れられることはとても難しい。そして愛されるよりは怖れられた方が良い――そうマキアヴェリは述べているのだ。だけど、これだけでマキアヴェリをファシストと決めつけてしまうのは具合が悪い。マキアヴェリは熱烈な愛国者だったのだ。イタリアを――正確にはフィレンツェを愛するがゆえに、列強の国々にイタリアが蹂躙されるのが我慢ならなかったのだ。時代と場所の影響は大きかった。あの時代には『君主論』はファシズムでもなんでもなかったのだろう。