村上春樹+安西水丸『象工場のハッピーエンド』

村上春樹と安西水丸の対談にもあるが、本書は絵と文の役割が逆である。文章の挿絵として絵が存在するのではなくて、安西水丸の絵に村上春樹の文が挿入されているような印象なのである。だから村上春樹の文章が読みたいのであればオススメできないけれど、カラフルでやさしい雰囲気の安西水丸の絵をぼんやり眺めるのも、たまには悪くないと思う。「鏡の中の夕焼け」という短編――というかショートショートのような文章が俺は良いなと思った。妻と喋る犬を交換した男のストーリーだ。なんだか雰囲気が良くて、安西水丸の絵と一緒にぼんやりと眺めるのに合っているような気がする。