井上トシユキ+神宮前.org『2ちゃんねる宣言――挑発するメディア』

神宮前.orgというのは、現代アートからインターネットサイトまで、新しいカルチャーの創造・支援を積極的に展開しているボランティアグループのことらしい。「2ちゃんねる」でお馴染みの西村博之(ひろゆき)や山本一郎(切込隊長)、メディア関係者やライターなどがメンバーなのだそうだ。

「2ちゃんねる」とは、個人レンタル掲示板T-CUP全体のアクセス数やヤフーBBSのアクセス数をも超える、超大規模なインターネット掲示板群のことだ。話題は、政治経済から時事ネタから哲学からファッションから趣味から雑談から地域情報からアダルトから違法行為まで、300以上ものありとあらゆるカテゴリーが存在する。「2ちゃんねる」にハマるかどうかは別にしても、何か1つくらいは自分の興味に近いカテゴリーがあるだろう。各利用者は好きなカテゴリーで好きな話題を眺めたり発言したりすることができる。また「2ちゃんねる」では特定のハンドルを名乗る必要がなく、ほとんどの人は「名無しさん」として匿名で発言している。記録も残らないので、少々ヤバいことも言える――全く知らない人のために軽く解説をしておくと、だいたい「2ちゃんねる」とはこんな感じの場所だろうか。

本書の内容は多岐に渡る。「2ちゃんねる」とは何か、「2ちゃんねる」はどのようにして起こったのか、「2ちゃんねる」の管理人ひろゆきとはどんな人物か、「2ちゃんねる」とはどんなところなのか、といったことから、「2ちゃんねる」が生み出した数々のキャラクターや「2ちゃんねる」閉鎖騒動などにも触れられている。必ずしも深い論点を提示できているわけではないが、わりとよくまとまっているのではないかという印象を持った。

また、8万字に及ぶひろゆきへのインタビューや、ひろゆきと田原総一郎・糸井重里・山形浩生・宮台真司といったビッグネームとの対談は、(話が噛み合っていない対談もあるが)なかなか他ではお目にかかることができない。「2ちゃんねる」に興味を持っている人なら読んでみても良いかも。