宮台真司+速水由紀子『サイファ 覚醒せよ!』

俺らが規定できる「社会」の外側には、未規定な「世界」が存在している。その未規定な「世界」は、時に「社会」の中で特別な何かとして表象される。その表象される特異点のことを「サイファ」と呼ぶ。典型的なものでは「神」である(要は「ようわからんスゴいもの」か?)。理論で説明できないことは確かに「世界」には多く存在するが、宗教の力に頼ってサイファを一方的に受容するのではなく、自分でその「理論で説明できないけどスゴいもの」を意識しながら生きていくだけでも人生かなり違ってくるよ――というのが(かなり乱暴な)本書のアウトラインである。1パラグラフで無理矢理まとめたが、まあ大体こんな感じであろうか。

意欲作なのだろうが、宮台の対談相手の速水が「うーん」な感じではある。まず、何かと文系理系などとすぐに言い出すのがウザい。イマドキ文系理系の統合とかいったものに力を入れられても。しかも「自分は違う」みたいな、高いところから見下ろす視点がイライラするし、かといって自分がヒキコモリだとか語るときは「自分はこういった大事な問題に昔から悩んできたんだ」みたいな、まるで優越感を持っているかのような語り口に思える。まあ、どうされてもムカつくんだから、たぶん俺は速水のことが嫌いなんだな(笑)

さらには、宮台も宮台で、バカだのなんだのと言葉使いが下品だ。ざっくばらんな印象を与えようとしているのか、それとも素なのかはよくわからない。でも、こういった言葉使いや高圧的な態度だと、一般の人々が宮台の言葉を聞かなくなってしまい、いずれは(宮台自身が嫌がっているにも関わらず)宮台の周囲に宮台マニアばかりが存在する、という事態を招いてしまわないだろうか?