アーヴィン・ウェルシュ『トレインスポッティング』

俺は映画をあまり観ないのだが、今までに俺が見た映画の中では最も面白いと思った映画が「トレインスポッティング」であり、その原作が本書である。巻末の解説を引用すれば、本書は「『人生を選ばないこと』を選んだ若者が未来を選ぶまでの物語」である。ヘロインジャンキーとして「人生を選ばないこと」を選び続けてきた主人公は、最後の最後に、自分を変えるために故郷も仲間も捨て去る。仲間を裏切ることで自らの退路を完全に断ち、心地良く自分を殺してくれる全てから解放されようとするのである。自堕落で退廃的で身勝手で後ろ向きで、しかし確実に前に進もうとする意志が見える。勇気を与えてくれる逆説的な小説だ。少なくとも俺にとっては。

小説の方は、映画よりもかなり長く、そしてディープなエピソードもけっこうあったりする。映画の方は、小説に比べるとフットワークが軽いかな。映画と小説、どっちもオススメですな。確実に。でも、まずは映画の方を観た方がわかりやすいかも。「これって普通は泣くような映画ちゃうで」と言われつつも、俺は泣いてます。

ちなみに「トレインスポッティング」とは「鉄道オタク」という意味だが、「ヘロイン中毒」というスラングでもあるらしい。