アーヴィン・ウェルシュ『エクスタシー』

前日の『トレインスポッティング』と同じ作者の本で、「ロレイン、リヴィングストンへ行く」「幸福はいつも隠れてる」「懲りない」の3つからなる中編集。『トレインスポッティング』の登場人物もかなりイカレていたが、本書の登場人物はそれよりもさらにブッ飛んでいる。登場人物の9割方がジャンキーなのは言うまでもなく、ホモ、獣姦、死姦、近親相姦、レズ……と、この小説は、さしずめアブノーマル展覧会とでも言った方が良さそうだ。

個人的に俺が最も面白かったのは「幸福はいつも隠れてる」である。薬害によって生まれつき両腕のない女を愛してしまった(例によってドラッグジャンキーの)主人公は、「この世に愛なんて存在しない」と絶望する少女の復讐に協力することになる……といった話。両腕のない少女に復讐を貫徹させるため、そして愛の存在を信じない少女に自らの愛を証明するため、主人公が自らの腕を捧げるラストシーンは、思わず涙してしまうほどの切なさ。