中島らも『アマニタ・パンセリナ』

中島らもは、「深夜番組で意味不明なことを言っているオッサン」と認識している人もいるかもしれないが、名前くらいは知っている人が多いだろう。リリパットアーミーという劇団を主宰していることや『今夜、すべてのバーで』『ガダラの豚』などで賞を受賞しているが、人生相談のような著書も人気があったはずである。

帯に「聖なる!?ドラッグの書」とあるように、本書は徹頭徹尾ドラッグ・エッセイである。アル中やら睡眠薬中毒やらブロン中毒やら、とにかくドラッグにどっぷり浸かってきた中島らもが、ドラッグにまつわる話を述べたのが本書である。アルコールや睡眠薬やシャブ(覚醒剤)や大麻やLSDといった一般的に知られるドラッグに始まり、咳止めシロップや幻覚サボテンや毒キノコやガマの油といったドラッグまで、まさにドラッグのオンパレードだ。

中島らもは本書で取り上げられるドラッグの大半を経験しているだけあり、やはり「経験者は語る」的な重みがある。その上で中島らもは「ドラッグには貴賤がある」「すべてのドラッグは『自失』への希求ではないか」「(ドラッグをやっても)生き残ってくる者と、一生廃人になる者がいる。これは『淘汰』なのだ」などと独自のドラッグ理論を展開する。それらの認識が妥当なものなのかどうかは、俺にはわからない。俺は酒(本書では酒はドラッグだと定義される)以外のドラッグを一切やったことがないし、やろうとも思わないからだ。まあ、それはおそらく俺にとって良いことなのだろう。俺のように「耐える」ということができず堕ち続けるような奴は、ドラッグにハマってしまったが最後、一発で「淘汰」されるに決まっている(笑)

中島らもの「咳止めシロップ中毒」にまつわる体験談などは特に興味深く、一読の価値があると思う。ドラッグに対する知識は重要だ。中島らものリアルな体験談は、ドラッグへの抑止になるだろうし、ドラッグにはまってしまった者への救いにもなるだろう。なかなか興味深い本。