日垣隆『情報の「目利き」になる!――メディア・リテラシーのQ&A』

「メディア・リテラシー」とは識字力のことだが、本書ではもっと広い意味でメディア・リテラシーを捉えている。そのことについて言及している箇所が本書の扉部分などにあるので引用してみよう。

メディア・リテラシーとは端的に言って、「情報の目利き」になることだ。「目利き」になることで私たちは、簡単には騙されなくなる。仕事であれ音楽であれ建築であれファッションであれ、騙されずに最後まで愉しむためには、このリテラシーが欠かせない。では、どのようにして身につけるのか? 本書では、「情報の目利き」たる著者が、自らの実践に基づき、その技法をQ&A形式で分かりやすくわかりやすく伝授。現代人必読の一冊だ。
仕事の現場でリテラシーは、良きプレゼンテーション、あるいは説得力として機能します。それを身につけることで、何に役立つのか、偏った情報に接したとき、それが偏った情報であることを見抜けるようになる。読書や調査が効率的になる。ほかにもいろいろあります。それを詳しく書きました。

「情報の目利き」でもピン来ない人もいるかもしれないが、メディア・リテラシーとは、俺の言葉でもっともっと簡単に書くなら、「いかに情報を上手に扱えるか」ということを示す尺度のことであると思う。「情報化社会」だの「情報の洪水」だのといった言葉が手垢にまみれて久しいが、そういった言葉が今でもリアリティを持つのは、もちろん「情報」という言葉が未だキーワードで在り続けるからだ。

嘘の情報を見抜く技法、メディアの洗脳にハマらない技法、情報を効率よく収集する技法、情報を巧く編集・整理する技能、情報を有効に発信する技法――これ以上は詳述しないが、挙げればキリがないほど、現代社会に生きる俺たちにとって情報に関わるスキルはことごとく必須能力である。そこで、そういった能力(メディア・リテラシー)を鍛え上げるにはいったいどうすれば良いのかをQ&A形式で示したのが本書である。具体的なノウハウや情報に対するスタンスの取り方が的確に書かれている。

また、本書の著者である日垣隆は新潮OH!文庫の『サイエンス・サイトーク』シリーズの著者でもあるし、あまり多くの著書を読んだわけではない(むしろ少ない)が、非常に好意的に注目している作家・ジャーナリストだ。本書でも少し出てくるが、例えば、軽犯罪者が実名で報道されるのに重犯罪者が匿名で報道されるのはおかしいということや、(加害者が匿名で報道されているのに)同じ事件の被害者は実名で報道しているのはおかしいということなど、日垣隆のバランス感覚や物事に対するスタンスに俺は共感できる。著者の(ある種)健全でバランスのとれた感覚やスタンスは、著者自身のメディア・リテラシーの高さを端的に示している。これは誰もが一読して損はない本だと俺は思う。ちなみに前述の犯罪報道に対する理由は、興味のある人は本書を自分で紐解いてほしい。俺は賛成だ。