中日新聞・東京新聞取材班『テロと家族』

米中枢同時多発テロと、その報復として始められたアフガニスタンへの空爆、そして再報復テロ。イスラエルの弾圧とパレスチナのテロ。報復の連鎖は今も続いている。本書は、日本のメディアがイデオロギッシュな側面を極力廃した視線でテロの被害を見つめた一冊である。

ひとまず日本はテロ合戦の舞台から外れているけれど、先の9.11テロでは日本人の被害者も出た。本書では、日本国内・ニューヨーク・アフガニスタン・中東へと飛び回り、主に肉親や家を失った人々を何度も何度も訪れ、事実と証言を積み上げることで、テロの現実を浮かび上がらせることに成功している。本書は賞を受けたそうだが、それに見合う出色の出来だ。かなりの良書だと思う。必読。