藤原和博は家族と数年間ほど外国で客員教授として生活したことがある。そのとき藤原和博は、息子は子どもだから簡単にイギリスに溶け込めるだろうと楽観的な期待を抱いていたようだ。しかし息子本人の性格や年齢的なこともあって、なかなかイギリスの幼稚園や小学校に溶け込むことができない。さらに渡英したときは次男の出産が控えていた。今までは息子と楽しく接しているだけで良かったのだが、そういった状況のため必然的に「子育てとは何か」「父とは何か」といったことについて考えざるを得ない場面に直面するようになり、外国で息子と必死に接していく――といった話である。
藤原和博は「この物語は、子育ての成功例をドキュメントしたものではないし、効率的なノウハウを伝授するのでもない。ましてや“父性”というものを箇条書きに整理するたぐいの本でもない」と書いているが、まさにその通りで、藤原和博の格闘を通して、「子育てとは」「父とは」「家族とは」といったデリケートな問題のヒントを得るための本であろう。さらに本書には、いま挙げた問題だけでなく、コミュニケーションや異文化交流といった問題も孕み持っている。とても興味深い。
巻末には「父が子に読んで聴かせる31冊の絵本」という付録がついているが、これがまた、かなり興味深い。先日NHKで絵本の特集を観たこともあり、本書を読んで絵本の物語も馬鹿にできないなあと実感しながら読んだ。こりゃあオススメだ。俺は基本的にコレクター気質だし、絵本を集めたくなったよマジで。