藤原和博+三室一也『親と子の[よのなか]科』

本書は藤原和博のサイトの掲示板「よのなかフォーラム」から生まれたそうだ。三室一也という人は作家やライターの類ではなく、サラリーマンである。ただ家庭では子どもと[よのなか]について掛け合いを行っているそうで、そういった点では子育てに関与しない(あるいは関与の薄い)一般的な父親像と三室一也のそれとは、かなりかけ離れていると言える。三室一也の取り組みは、最近ちょくちょく学校で力を入れて取り組んでいる総合学習を、いわば自宅で行っているようなものであろう。「よのなかフォーラム」に連載していた親子の問いかけの事例に、ガイダンスや解説などを加えて本の体裁に整えたのが本書である。

わりと上手く行った事例を集めているそうだが、子どものチンプンカンプンな発言や、イマイチ噛み合っていない会話、教え間違い、そういった「失敗談」と呼べるようなモノも本書には隠すことなく収録されている。その点では非常にリアルだと俺は思った。何も親子に限った話ではなく、学校や塾での事例集としても十分に応用できる本ではないかと感じたので、教育の関係者や教育に興味のある人は、ぜひ読んでみたら良いと思う。