NHKビジネス塾編集委員会『NHKビジネス塾の教科書IV』

今回も「コーディネーション」という言葉は主題の1つになっている。大企業にとっては規模が小さくて魅力が薄くても、中小企業にとっては魅力的な市場、それは探せば多く存在する。また、大企業では意志決定や行動のスピードが遅くて戦っていけず、中小企業やスピンアウトベンチャーこそがチカラを発揮できる市場もある。

スピードの要求される市場を新たに開拓していったり、そうした市場で戦ったりするには、「いま持っている技術を活かせそうだけど技術が1つ足りないから、その技術を5年か10年かけて自前で開発しよう」といったチャンスのあるケースは、もうそれほど多くはないかもしれない。「大が小を兼ねる」といった発想ではなく「小が集まって大を兼ねる」といった、いわば逆転の発想が今こそ求められている。自分の技術を活かせる場がないなら、他とのアソシエーションによって場を設定すれば良いし、その人脈がないなら、技術のマッチングを専門に行うコーディネーション企業と組めば良い――というのは、確かに地方の中小企業やベンチャー向けの新戦略として非常に面白い試みだと思う。しなやかで機動的だ。

あと、日本の中小企業が外国で評価を受けて「逆輸入」という形で日本でもシェアを獲得する――といった事例も面白かった。やはり「ハク」って大事なんですな。もはや中国と価格勝負できる中小企業は日本には少ないだろうから、中国や東南アジアの工場では作れない高技術高付加価値のモノで勝負していくしかなさそうだし。その際、今回のケースの「逆輸入」などのブランディング戦略は有効だろう。「良い製品ですよ」だけじゃあ価格勝負に引きずり込まれる可能性もあるが、日本人はブランドに弱いから。そういや、少し前からブランディングやマーケティングの本の平積みが増えてきている気がする。みんな注目しているんだろうな。それとも不況時にはブランディングやマーケティングが流行るのか?

このシリーズはとにかく必読。