フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング・コンセプト』

マーケティングの大家フィリップ・コトラーの著書は、その多くが1000ページを超える大著であり、かなり腰を据えて読まねばならなかった。しかし本書には、今日のマーケティングで最も重要だと思われる80のコンセプトがアルファベット順で書かれている。コンセプトは内容がそれぞれ1語ずつで完結していて、索引もあるので、マーケティングのエッセンスを捉えることができる。さらに深くマーケティングを学びたい人は、本書を読んだあと別の大著に移れば良いと思う。

また、本書には深い示唆に富んだ視点や表現が多いので、初級者だけでなく上級者が読んでも新たな発見がありそうだ。例えば、最後の80番目のコンセプトとして「熱意(Zest)」という項目が挙げられている。もちろん、これはマーケティングについてのテクニカルな話では全然ない。「マーケターとして採用するのは、人生に熱中できる人間に限るべきだ。そうでない者は経理に回すべきである」という言葉からは、コトラーのマーケティング論の本質が見える。重要なものは熱意なのだ。